【世界のミンワから】第41回「クモとリス」

このコラムについて

世界は物語であふれています。面白い話もあればつまらない話もあり、学びがある話もあれば、全く何のためにもならない話もあります。
そんな世界各地に伝わるミンワを紹介していきます。きっと何かが感じられるはずです。

昔、畑仕事の上手なリスがいました。
リスは毎日、ピョンピョン枝から枝へ飛び移っては、遠い畑へ出かけました。
広い広い、リスの畑にはトウモロコシがよく実りました。

採り入れが近づいた、ある日のこと、クモがリスの畑を通りかかりました。
「こりゃあ立派なトウモロコシだ。いったい誰の畑だろう。」
クモは辺りを見回しました。
「はてな?家も見えないし、こんなところまでやってくるのは誰だろう?そうだ畑へ来る道を辿っていけば、持ち主が分かるだろう。」

クモは畑の周りをぐるりと回って道を探しました。
ところがリスは枝から枝へと渡ってくるのですから、道はどこにもありません。
「こりゃ不思議。ひょっとすると、この畑をそっくりちょうだいできるかもしれないぞ。」
欲張りクモはにやりと笑いました。

うちへ帰る途中、クモはどうしたら畑を自分のものにできるか、考えました。
晩御飯のあと、やっとうまい考えが浮かびました。
そしてうちのものたちに言いました。
「明日はお父さんについておいで、素晴らしいところへ案内してやるからね。そこでたった1日だけでいいから、一生懸命働いてもらいたい。そうすりゃ、来年まで働かなくっていいよ。」

あくる日、クモの子供たちはお父さんのあとについて、リスの畑へやってきました。それからみんなでクモの家からリスの畑まで長い長い道をつくりました。
そしてできた道をしっかりと踏み固めました。

こうしておけば、誰が見たって、クモが長い間トウモロコシ畑へ通ったと思うに違いありません。

「さあ、これで、おれの畑ができあがった。みんなトウモロコシを取り入れなさい。遠慮はいらない。ドンドン取り入れるんだ。」

クモの子供たちはせっせとトウモロコシを取り入れました。
次の日も、その次の日も、クモの子供たちはトウモロコシを取って帰りました。

まもなくリスはトウモロコシが盗まれているのに気が付きました。
リスはトウモロコシ泥棒を捕まえようと木の上に隠れて畑を見張っていました。
そこへクモが子供を引き連れてやってきました。

クモたちがトウモロコシをか刈り取ろうとしたとき、リスは木の枝からポンと飛び降りました。
「どうして僕のトウモロコシを盗むんだ。」
とリスが言いました。

「これは私のものですよ。あなたこそ、ひとの畑に飛び込んできたりして失礼じゃありませんか。」
とクモが言い返しました。

「僕の畑だよ。」
リスはもうカンカンに怒っています。クモはにやりと笑って言いました。

「へえ、あなたの畑ですって。笑わせないでくださいよ。私たちがここに来る道の他、あなたの来る道なんてないじゃありませんか。」

「僕は、道なんかいらないんだ。いつも木を伝ってくるんだもの。」
リスは悔しがりました。
リスは怒れば怒るほど、クモはニヤニヤ笑うばかりです。
その間クモの子供たちはドンドントウモロコシをとっています。
リスは大声で言いました。
「よし、泥棒め!覚えてろ、裁判官に訴えてやる。僕が大事に育てたトウモロコシを盗まれて黙ってみていられるか。」

リスはクモを連れて裁判所へ行きました。

「畑へ行く道を作ったのはクモだな。」
と裁判官が尋ねました。
「はい、道を作ったのはクモです。」
とリスが答えました。
「あれがリスの畑だという証拠は何もない。それなら畑は道を作ったクモのものだ。」
と裁判官は言い渡しました。

あくる朝、かわいそうなリスは一生懸命作ったトウモロコシをクモたちが刈り取って積み上げていくのをぼんやり眺めていました。
クモたちは残らず取り入れると、トウモロコシの大きい荷物を、引っ張って、よろよろと家へ帰っていきました。

突然、空が暗くなって、大粒の雨が滝のように降ってきました。
クモは荷物を置いたまま空き家に飛び込みました。
雨はますます激しく降ってきました。
道は水だらけになってしまいました。
しばらくして雨がやみました。
青空が広がって、お日様が輝きはじめました。

クモはトウモロコシを置いてきたところまで引き返しました。
そして荷物の近くまできたとき、あっと叫んで立ちすくみました。
大きなカラスがトウモロコシのうえに乗っかって羽をいっぱいに広げているのです。カラスはとっても大きいので、羽の下のトウモロコシは濡れていません。
クモは
「ありがとう。ありがとう。カラスさん。私のトウモロコシを守ってくれたんですね。おかげで広げて乾かす必要がなくなりました。」
と、いって、ぴょこぴょこ頭を下げました。

「あんたのトウモロコシだって?冗談じゃない。これは俺のだよ。道端に大事な荷物を置きっぱなしにしていくやつはないだろう。これは俺のだ。」
と叫びました。

それからカラスは、大きな爪でトウモロコシをぎゅっとつかむと空高く舞い上がっていってしまいました。
クモとその子供は仕方なく何にも持たずに家へ帰っていきました。
クモはこれでずいぶん懲りたと思うでしょう。

ところが、クモはこのことをすぐに忘れてしまったのです。
まもなく、またずるいことを始めたそうですよ。