【世界のミンワから】第39回「ウサギのつの」

このコラムについて

世界は物語であふれています。面白い話もあればつまらない話もあり、学びがある話もあれば、全く何のためにもならない話もあります。
そんな世界各地に伝わるミンワを紹介していきます。きっと何かが感じられるはずです。

ゾウが宴会を開こうと思いつきました。
そこでビールやご馳走を用意すると、獣たちを呼んで言いました。

「このビールは角のあるものだけに飲ませてやる。角のないものは、来てはいかん。」
獣たちはゾウを怖がっていましたから、みんなおとなしく言うことを聞きました。
けれどもウサギは自分に角がないのが残念でなりませんでした。
「さぞかしおいしいビールだろうな。何とかして宴会に行く方法はないものかな?」
ウサギはゾウを騙すことにしました。
ウサギは茂みに隠れて、若いシカが来るのを待っていました。
シカが茂みのそばを通り過ぎようとしたとき、ふいに、ウサギは後ろからとびかかっていきました。

そして素早くシカの角を切り取って、自分の頭に貼り付けました。

こうして、ウサギは大威張りでゾウの宴会に出かけていきました。

ゾウはウサギを見ると、驚いて言いました。
「ウサギの角が一番立派じゃないか。大したものだ。さあ、遠慮なくのめのめ!。」

他の獣たちも口をそろえてウサギの角を誉めました。
ウサギはビールを飲み始めました。
食いしん坊のウサギは誰よりもたくさん飲みました。
酔っぱらって、ふらふらになるほど飲みました。

そこへ突然、年寄りのシカがやってきました。
ウサギはシカに尋ねました。
「おやおやずいぶん遅くおいでだね。おじいさんには角がないのかい?」
「わしはお前がどんな顔をしてビールを飲んでいるのか、見物に来たのさ。」
と年寄りのシカは答えてウサギのそばに座りました。

そしてウサギの方にそっと身体をかがめてひそひそ声で言いました。
「貼り付けたものは剥げてしまうぞ。」
お客の獣たちはシカがウサギにどんな内緒話をしたのか知りたがりました。

ウサギは笑って答えました。

「こんなじいさんの言うことなんか、気にしなくてもいいじゃありませんか。なにね、シカのじいさんはご馳走を食べ過ぎて下らんことをブツブツ言ってるんですよ。」

年よりのシカはそれを聞いて、今度は大声で言いました。

「貼り付けたものは剥げてしまうぞ!」

ゾウとお客たちはウサギのツノをジロジロ眺めました。
ウサギはぎょっとして、ガタガタ震え出しました。
その途端に、貼り付けた角が剥げて地面に落ちてしまいました。

ウサギはびっくり仰天。
一目散に逃げていきましたとさ。