【世界のミンワから】第37回「とうもろこし泥棒」

このコラムについて

世界は物語であふれています。面白い話もあればつまらない話もあり、学びがある話もあれば、全く何のためにもならない話もあります。
そんな世界各地に伝わるミンワを紹介していきます。きっと何かが感じられるはずです。

メキシコのある村にお金持ちの百姓がいました。
お百姓は広いとうもろこし畑をもっていて、毎年たくさんのとうもろこしを取り入れました。

ところがある年、とうもろこしを刈り取るばかりになった時、とうもろこし畑に泥棒が入ってきました。

さて、この百姓には三人の息子がいました。
一番上の息子は怠け者でした。
二番目の息子は威張り屋でいつも人を馬鹿にしていました。
三番目の息子は誰もよく注意してみたことがないので、どういう子供かよくわかりませんでした。

お百姓は三人の息子を呼んで、
「誰でもいい泥棒を見つけてくれ。見つけたものにわしの財産を譲ろう。」
と言いました。

まず一番上の息子が畑に行きました。
息子はご馳走を詰めたかごをもって、鉄砲を肩にかけて、一足ごとにあくびをしながら、ぶらりぶらりを出かけました。
庭の井戸まで来ると、
「ちょっとくらい眠っても大丈夫だろう。」
といって、腰をおろしました。そしてすぐにいびきをかいて、眠ってしまいました。やがて
「私をとうもろこし畑へ連れて行ってください。泥棒を捕まえるお手伝いをします。」
というカエルの声で目を覚ましました。

「なんだと、この汚らしいろくでなしめ!お前なんかに泥棒が捕まるものか?!」
と言って息子はカエルを井戸の中に投げ込んでしまいました。

それからとうもろこし畑へ出かけました。
けれどもすぐまたこっくりこっくり居眠りを始めました。
夜が明けて目が覚めた時にはとうもろこしはもう盗まれていました。

一番上の息子はとぼとぼ家に帰って、お父さんにすっかり話しました。

今度は二番目の息子の番です。
二番目の息子はマメを詰めたかごとひょうたんを持って出かけました。
井戸まで来て、ひょうたんに水をくもうとしたとき、カエルがぴょこんぴょこんと近づいてきました。
「私をとうもろこし畑へ連れて行ってください。泥棒を捕まえるお手伝いをしますから。」
息子はびっくりしてひょうたんを落としそうになりました。
「おいだまれ!おどかすなよ。」
と言って、カエルにかまわず行ってしまいました。
そしてとうもろこし畑に座り込んで泥棒を待ちました。

まもなく鳥のはばたきが聞こえました。
尾の長いきれいな鳥が月の輝く空にあらわれたかと思うと、すーととうもろこし畑におりてきました。

これこそ泥棒に違いありません。
二番目の息子は狙いを定めてズドンと撃ちました。

鳥は叫び声をあげて逃げていきました。
後には、羽が二枚残りました。

二番目の息子は羽を拾い上げて朝になるまで待ちました。
けれども鳥はそれきりあらわれませんでした。
二番目の息子も泥棒を捕まえることはできませんでした。

三番目の息子が泥棒を捕まえに行きたいと言いだしました。
「おれにできなかったんだ。お前にできるはずがないじゃないか。」
と一番上の兄さんが言いました。

それでも三番目の息子はパンだけもってでかけました。
井戸まで来ると、腰をおろしてパンを食べました。
「こんにちは。」
とカエルの声がしました。
息子はカエルを手のひらにのせて
「パンが欲しいのかい?とっても美味しく焼けているよ。」
カエルはパンをもらって食べ終わると言いました。

「私をとうもろこし畑に連れて行ってください。お手伝いしますよ。」
「ああ、いいとも。一緒においで。」
と三番目の息子は言いました。
するとカエルは
「この井戸は魔法の井戸です。この中に何でも願い事を言ってごらんなさい。きっとかなえられますよ。」
と言いました。三番目の息子は井戸の中へ
「とうもろこし泥棒が捕まえられますように。美しいお嫁さんが来てくれますように。窓がいっぱいついている家に住めますように。」
と願い事を言いました。

三番目の息子とカエルは一緒にとうもろこし畑に行きました。
まもなく美しい鳥がとうもろこし畑に舞い降りてきました。
息子は鉄砲を向けました。ところがそのとき。

「あっ!うっちゃいけません!」
とカエルが叫びました。
三番目の息子は鉄砲を下に置きました。

すると美しい鳥は頭の上を舞いながら、
「私は魔法をかけられて鳥になった娘です。おなかがすいてとうもろこしをいただきました。」
と言いました。

カエルがケロケロと歌をうたうと美しい鳥が羽をふるいおとしました。
そしていつの間にか、きれいな娘の姿に変わりました。

「さあ、あなたのお嫁さんですよ。」
とカエルが言いました。

三番目の息子は娘の手を取って、お父さんのところに帰りました。
するとどうでしょう?
お父さんの家の隣に窓のたくさんついている大きな家が建っているではありませんか。

「さぁ、これがあなたの家ですよ。」
とカエルが言いました。
三番目の息子がお父さんのところへ行くと、一番上のにいさんは
「ちぇ、カエルを井戸に投げ込まなきゃよかった。」
と言って、悔しがりました。

二番目のにいさんは
「カエルの歌を聞いでやるんだったなぁ。」
と言って悔しがりました。

お父さんは約束通り三番目の息子に財産をやりました。
三番目の息子は美しい嫁さんとカエルと一緒に日の当たる明るい家で楽しく暮らしました。