【世界のミンワから】第35回「ジャネットと悪魔」

このコラムについて

世界は物語であふれています。面白い話もあればつまらない話もあり、学びがある話もあれば、全く何のためにもならない話もあります。
そんな世界各地に伝わるミンワを紹介していきます。きっと何かが感じられるはずです。

昔、田舎に働きに出ている娘が一人いました。
お婆ちゃんが病気だという噂を聞いたので、次の日に会いに行こうと家を出ました。
ところが、少しも進まないうちに、分かれ道に出てしまって、どっちに行ったらいいのかわからなくなってしまいました。
すると一匹の雌豚を連れたおっかない男がやってきました。

娘は、お婆ちゃんが病気だと言い、どっちの道へ行ったらいいのか教えてほしいと言いました。
男は「左に行きな。それが一番いい道だし、近いよ。すぐに着くから。」と教えました。

娘がそっちへ行くと、じつは一番遠回りの悪い道だったようで、お婆ちゃんのところへ行くのにすっかり時間がかかってしまいました。
さんざん苦労して、時間がかかってやっと着いたのです。

ジャネットというのが娘の名前なのですが、その子が悪い道をあっちに行ったり、こっちに行ったりしているうちに、うそつきの悪党は、近い良い道を通って娘よりもずっと早くお婆さんの家に着きました。
そうして、可哀想にお婆ちゃんを食べてしまいました。
血を戸棚にしまい、ベッドに入っていました。
それから娘がやってきて、戸を叩いて開いて中へ入って、言ったのです。

「お婆ちゃん、具合はどう?」
「あんまり、よかないよ。」その悪党は作り声で辛そうに返事して
「おなかはすかないかい?」と娘に聞きました。

「ええ、お婆ちゃん。何か食べるものはない?」
「戸棚に血があるから、鍋で煮て食べな。」
娘は言うとおりにしました。

ところが、血を似ていると、煙突の方から天使様の声みたいのが聞こえてきました。
「ああ、お婆ちゃんの血なんか煮て、罰が当たるよ。」
「婆ちゃん。煙突の上で何か言っているよ。」と娘。
「そりゃ何でもないよ。おまえ、小鳥が歌を歌っているのさ。」
それで娘はまた血を煮始めました。
そうしたらまた声が歌い始めました。

「ああ、婆ちゃんの血なんか煮て、罰当たりの娘が!。」

それでジャネットは言いました。
「お婆ちゃん、お腹いっぱいになっちゃった。この血はいらないわ。」
「それじゃあ、ベッドにおいで。ベッドに。」
ジャネットはベッドに行って、そいつの横に寝るとびっくりして叫びました。
「まぁ、お婆ちゃん、なんて大きな手なの?」
「おまえを、しっかり抱きしめるためだよ。抱きしめる。」
「まぁ、お婆ちゃん、なんて大きな足なの?」
「そりゃおまえ、上手に歩くためだよ。上手に歩く。」
「まぁ、お婆ちゃん、なんて大きな目なの?」
「お前をしっかり見るためだよ。見る。」
「まぁ、お婆ちゃん、なんて大きなお口なの?」
「そりゃあ、おまえ、上手に食べるためだよ。上手に食べる。」

ジャネットは怖くなって言いました。
「まぁ、お婆ちゃん、用足しに行きたくなったわ。とっても行きたいわ。」
「ベッドでしちまいな。ベッドで。」
「そりゃ汚いわお婆ちゃん。あたしが行っちまうのが嫌だったら、あたしの足に毛糸の紐を縛り付けりゃいいじゃない。あたしが外にいるのがつまんないんだったら、引っ張ればいいのよ。あたしのいるところがすぐにわかって安心よ。」

「おまえの言うとおりだよ。おまえの。」

それでその怪物は毛糸の紐をジャネットの足に縛り付けました。
そしてその端っこを持っていました。
娘は表に出ると、紐を切って逃げ出しました。
するとすぐに偽のお婆ちゃんは言いました。
「もうでたかい? ジャネット、もうでたかい?」
そしたら、あの天使の声がまた煙突から返事をしました。

「まだだよ。婆ちゃん、まだだよ。」

でも、すっかり時間が経つと、
「終わったよ」言いました。

怪物は毛糸の紐を引っ張ったけど、その端っこには何にもついていません。
その悪魔はカンカンに怒って、起き上がると、豚小屋に置いておいたでっかい雌豚にのって娘を捕まえようと走り出しました。
そうして、洗濯女たちが洗い物をしている川までくるとこう言いました。
「娘を一人みなかったかい?バルベット犬をつれた、娘さ。」
「見たとも。」と洗濯女たちは答えました。

「あたしたちが川の水にシーツを広げたらその上を渡っていったよ。」
「それなら俺もわたるから、ひとつ広げてくれないか?」と悪党は言いました。

洗濯女たちが水の上にシーツを広げると、悪魔のやつは雌豚にのってわたり始めました。
ところが、たちまち沈んでしまって大声をあげて叫びました。

「飲み込め!飲み込め!でっかい雌豚。お前がぜんぶ飲み干さなきゃ、俺たち二人は溺れ死ぬ。」
ところが、雌豚も全部飲み込めなかったから、悪魔は雌豚と一緒におぼれちまって、娘は助かったそうです。