【世界のミンワから】第34回「きつねと獲物」

このコラムについて

世界は物語であふれています。面白い話もあればつまらない話もあり、学びがある話もあれば、全く何のためにもならない話もあります。
そんな世界各地に伝わるミンワを紹介していきます。きっと何かが感じられるはずです。

ひとりの漁師が魚の入った大かごを引っ張って歩いていました。
それを見たきつねは死んだふりをして道に倒れて待っていました。

きつねを見つけた漁師は大かごの上にポンと放り上げて言いました。
「こりゃいいや、何もないよりましと言うもんだ。」

漁師は家に着くと、おかみさんに魚がいっぱい獲れたから鍋に火をかけるように言いました。
ところが大かごの中はからっぽ。
何もありませんでした。
きつねが全部森へ放り込み、自分もさっさと逃げてしまったのです。
おかげで漁師とおかみさんはどうしようもなくなってしまいました。

狼はきつねが獲物の魚を拾い集めているのを見て聞きました。
「これをどこでもらったんだい?」
「インモラ村の井戸からしっぽで釣ったのさ。お前さんも空に星が光っているころに行けば釣れるよ。」と教えました。

それを聞いた狼は井戸を釣りしようととても寒い夜に出かけていきました。

井戸にしっぽを垂らした狼はしばらく座り込んで、待っていましたが、ぴくっともこなければ魚が寄っても来ません。

一方きつねはおかみさんの家を訪ね、
「狼がおかみさんとこの井戸でクソをしているよ。」
と言いました。

おかみさんたちが棒を持って狼を追い払いに行くと、狼はしっぽが強く凍り付いていて、抜くことも逃げることもできなくなっていました。
そこでおかみさんたちは狼を袋叩きにしてしまいました。

さて、きつねはおかみさんたちが狼を叩きのめしている間に母屋に飛び込みました。
かまどの乾燥台にバターづくりの筒が温めてあるのを見つけると飛びついてなめ回り頭から耳からベタベタに汚してしまいました。
狼のところへ戻ったきつねはどんなにひどい目にあったかと愚痴をこぼしている狼に向かって言いました。

「見てくれよ!おれだってひどくやられたんだよ。ほら脳みそが耳まで垂れちゃってるだろう!」

「あれーっ!俺の方がまだましだあ!」と狼はきつねを背負って歩き出しました。
きつねは狼の背中で歌を歌っていました。

「病人が元気な人を背負って歩くなんて、おかしな話。」