【世界のミンワから】第31回「マメ子と魔物」

このコラムについて

世界は物語であふれています。面白い話もあればつまらない話もあり、学びがある話もあれば、全く何のためにもならない話もあります。
そんな世界各地に伝わるミンワを紹介していきます。きっと何かが感じられるはずです。

あるところに、お百姓の夫婦が住んでいました。
二人はたいそう幸せに暮らしていました。
ただ、悲しいことに子供が一人もいませんでした。

ある日、お百姓の女将さんは、豆を入れた鍋を釜土にかけました。
そのとき、豆が一粒、こぼれ落ちましたが、女将さんは気づきませんでした。
そこへ、近所の女将さんがやってきて、
「これから娘たちを畑に落ちぼひろいにやるところですよ。おたくの娘さんもいかせたら?」
と誘いました。

「まあ、人をからかうつもりなの?うちに子供がいないのを知っているくせに。」
と言いました。

ところが突然、釜土のかげから、小さな声が聞こえてきました。
「お母さん、私がここにいるじゃありませんか。あたしみんなと一緒に行きたいわ。」

女将さんがびっくりして、釜土の後ろを覗きました。
見ると、豆のように小さな女の子がニコニコ笑っています。
女将さんは大喜びで、女の子を抱き上げました。

豆から生まれた女の子はマメ子という名前を付けてもらいました。
マメ子はみんなと一緒に畑へ行きました。

女の子はせっせと麦の落穂を拾い集めました。
やがて、森の向こうに日が沈みかけました。
女の子たちは帰る支度をはじめました。
ところがマメ子は帰るのを嫌がりました。

「もうちょっと遊びましょうよ。ちっとも遊ばないで帰るのなんてつまらないわ。」

「じゃあちょっとだけ遊ぶならいいわ。」
女の子は少しだけ、遊ぶつもりでした。
ところが気が付いてみると、いつの間にか日はとっぷり暮れてあたりは真っ暗になっていました。

さあ、大急ぎで帰らなくてはなりません。
森には恐ろしい魔物が住んでいるのです。

女の子たちは慌てて帰ろうとしました。
けれどもそのときには、魔物はもう森の入り口でみんなを待ち構えていました。
「ほほうこりゃすごい!うまそうなやつがぞろぞろやってくるぞ。今夜は久しぶりに腹いっぱいご馳走にありつけるな。」

魔物はホクホクしながら女の子に近づいてやさしそうに声をかけました。

「こんなに遅くなるまで遊んでいたのかね?いけないねえ、オオカミに食われてしまうよ。これから帰るのは無理だから、わしのうちに来て泊まりなさい。」
仕方がありません。女の子たちはおそるおそる魔物の後についていきました。

魔物は女の子たちを自分のうちに連れて行くと、さっそく寝床で寝かせました。
1時間経ちました。
魔物は、

「もうみんな眠ったかね?」
と声をかけました。

「眠ってないわ。おきているわ。」
とマメ子は大声で叫びました。

「どうして眠らないんだね?」
「だってうちは毎晩眠る前にケーキと卵焼きを食べていたんですもの。食べないと眠れないわ。」
魔物は仕方なく、ケーキと卵焼きを作りました。
「みんな起きてご飯を食べましょう。」
マメ子が叫ぶと、女の子たちは飛び起きました。
そしてケーキと卵焼きを食べるとまた眠ってしまいました。

けれどもマメ子は眠りませんでした。
また1時間経ちました。
魔物はまた声をかけました。

「もうみんな眠ったかね?」
「みんなは眠ったわ。でもあたしは起きているわ。」
とマメ子は答えました。

「おまえはどうして眠らないんだ?」
「だってうちは毎晩、夕ご飯の後でお水をもらうんですもの。ただのお水じゃなくて、水晶山の向こうの光の海から汲んできたお水よ。ひしゃくじゃなくてざるで汲んできたお水よ。」

「なんてわがままな娘だろう。勝手なことばかりいってやがる。」
魔物はがっかりしましたが、はるばる水晶山のむこうの光の海へ水を汲みに行きました。

マメ子は女の子たちを起こして、大急ぎで逃げ出しました。
ところがマメ子は自分のひろった落ちぼを魔物のところに忘れてきてしまいました。

「みんな、先に行ってね。すぐ帰ってくるから。」

いさましいマメ子は魔物のうちに、落ちぼをとりに戻りました。
魔物はもう帰っていました。
女の子たちが逃げてしまったので、かんかんに怒って、そこらじゅうを恐ろしくとがった爪でひっかいていました。

マメ子はすぐに見つかって、捕まってしまいました。
魔物はマメ子を袋に入れると、一人で外へ出ていきました。
マメ子をぶってやろうと思って、木の枝を探しにいったのです。

かしこくてすばしっこいマメ子は袋に穴をあけて、外に抜け出しました。
そして、魔物のうちのネコを袋に入れると、自分は部屋のすみに隠れました。

木の枝を拾ってきた魔物は袋をピシッとぶちました。
「にゃーお」
ネコが鳴き声をあげました。

「こいつめ、今度はネコの真似をするのか?もうだまされんぞ。」
魔物は何度も袋をぶちました。
すると袋が破れて、中から本当のネコが転がりでました。

さあ、魔物の怒ったこと、怒ったこと。
気がふれたように部屋中を暴れまわりました。
すみに隠れていたマメ子はまた捕まってしまいました。

「こいつめ、こいつめ、もう勘弁ならん。たった今食べてやる。さあ早く言え!お前の食べ方はどんなのが一番うまいんだ。」

「とってもおいしい食べ方があるわ。まず釜土に薪をいっぱい燃やすの。そしてケーキを焼くの。出来立てのケーキの間にあたしをチーズみたいに挟んで食べればステキにおいしいわよ。」

「よしその通りにして食ってやる。できたてのケーキの間に挟んで食ってやる。」

魔物はさっそく仕事に取り掛かりました。
釜土に火を起こして、薪をドンドン燃やしました。
粉を練って、こねて、平らに伸ばしました。
「さあ、これでよし!」
魔物はねり粉を釜土にかけようとして、かがみこみました。
その時を待っていたマメ子はありったけの力をだして、魔物を釜土の中に押し込みました。たちまち魔物は焼け死んでしまいました。

マメ子は落ちぼをいれた袋をもって、とっととうちに帰りました。