【世界のミンワから】第26回「長靴をはいたネコ」

このコラムについて

世界は物語であふれています。面白い話もあればつまらない話もあり、学びがある話もあれば、全く何のためにもならない話もあります。
そんな世界各地に伝わるミンワを紹介していきます。きっと何かが感じられるはずです。

むかし、あるところに1人の粉ひき屋が亡くなりました。
そこで三人の息子が残された財産を分けました。
財産と言っても貧乏なので、水車小屋とロバとネコしかありません。

一番上の息子が水車小屋をとり、次の息子がロバをとりました。
三番目の息子はネコをもらってがっかり。
「ちぇ、何の役にも立たないよ。」
するとネコがモノを言いました。
「僕に長靴と袋を買ってください。」
末息子は変なネコだと思いましたが、買ってやりました。

ネコは長靴をはくと、袋を担いで森へ行きました。
袋の口を開け、中に餌を入れて眠ったふりをしました。
しばらくすると、ウサギが袋に飛び込んできました。

ネコは急いで袋の口を閉め、王様のところへ行って言いました。
「カラバ侯爵の言いつけで獲物を持ってまいりました。」

カラバ侯爵なんて本当はいません。
でも何も知らない王様は大喜び。
「お礼にこれをカラバに。」
とたくさんの金貨をくれました。

ある日王様はお姫様と一緒に、馬車で川遊びに出かけました。
するとネコは末息子を川に連れ出し、無理やり裸にして泳がせました。
王様たちが来るとネコは言いました。

「王様お助け下さい。」
「主人のカラバ侯爵様が、泳いでいる間に着物を盗まれてしまったんです。」

「そりゃ、お気の毒に。」
王様は家来に命じて、立派な服を持ってこさせ、末息子に着せました。
靴も履かせました。

「さあ!一緒にこの馬車で散歩をしよう。」
新しい服を着た末息子はとても立派に見えました。

三人が馬車に乗ると、ネコは馬車より先に走って広い畑に行きました。
「まもなく王様がここをお通りになる。王様が『この土地は誰のモノか?』と聞いたら、『カラバ侯爵様のモノです。』というんだぞ。そう言わなかったら、あとでかみ殺してやるからな。」

やがて王様の馬車が来ました。
王様は広い畑を見渡して、
「この土地は誰のモノか?」
と尋ねました。
みんなは口をそろえて答えました。
「カラバ侯爵の土地でございます。」
王様は
(カラバ侯爵は大変なお金持ちだ。)
と思ってびっくりしました。

ネコはまたドンドン先回りして、人食い鬼の住んでいるお城に行きました。
恐ろしい人食い鬼は大金持ちで、あたりの土地を全部持っていたのです。
ネコは人食い鬼にうやうやしくお辞儀をして、言いました。

「噂によれば、あなたさまはどんな動物にでも姿を変えられる不思議な力をお持ちと聞きましたが、ライオンにも化けられるのでしょうか?」

すると人食い鬼は
「わけないことさ。」
とたちまち、大きなライオンに姿を変えました。
「なんというお力…では、小さなネズミには。」
「それも簡単さ。」
人食い鬼はあっという間にネズミに化けました。
途端にネコはネズミにとびかかり、ぱくっと食べてしまいました。
そこへ馬車の音が聞こえてきました。

ネコは急いで外へ出て王様に言いました。

「先に来て、お待ちしておりました。ここがカラバ侯爵のお城でございます。」
王様は大きなお城を見てますますびっくりして言いました。

「カラバ侯爵、姫のお婿さんになってくれぬか?」

末息子は大喜びで
「よろしゅうございます。」
と、答えました。

粉ひき屋の末息子はこうして、長靴をはいたネコのおかげで王子様になりました。

いっぽうネコはお城をもらって昼寝ばかり。でも時々は面白そうにネズミを追いかけていましたとさ。