あの背中を追って-第15回

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

毎週木曜日配信のミンワの新作。株式会社ジースタイラス「あの背中を追って」をお届けします。

第六章 リーマンショックによる大不況

 その日の夜、全員に同じ文面のメールを出した。会社の状況を説明し、今すぐリストラしないと会社が継続できないこと。誰もいなくなっても、一人でも事業は続けていく。ただし、メンバー全員を守ることはできない。できれば、今すぐ辞めてほしい。そんな内容だった。
 次の日会社に行くと、メンバーの反応は様々だった。僕に詰め寄って泣き出す人、「絶対に辞めたくない」と言う人、会社に来ない人……。出勤してこなかった彼は、それきり姿を見せることはなかった。
 そんな中、昨日のうちにメールをもらっていた二人がいた。彼らは示し合わせたように「これから面談をするだろうから、一緒に担当する」と言ってくれたのだ。自分をリストラする予定かどうかも聞かず、ただ僕の負担を軽くしようとしてくれた。
 Eduで「折阪君に私の気持ちはわからない」と命を絶ってしまった人や、イベントの採算が合わないと知るや離れてしまった人。これまで離れていった人たちを次々と思い返した。僕はそんな経験をして、人に対して期待しないようになっていたのだろう。どうやったって、お金以外で人をつなぎ留めておくことなんかできない。いつからか、そう思うようになっていた。
 今、こうして事業がうまくいかなくなってしまったのに、自分の進退を顧みずに、僕を助けてくれようとしている人がいる。予想外の申し出に、これまでの人生で初めて、メンバーを信じられる気がした。

 その後数日かけて、彼らが全員と面談してくれた。彼らとも相談し、成果が出ていない人たちに辞めてもらい、従業員は半分になった。
 ジースタイラスは身を切るようにして、ようやく再建する準備が整ったのだった。

文 栃尾江美
絵 山本麻央