あの背中を追って-第12回

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

毎週木曜日配信のミンワの新作。株式会社ジースタイラス「あの背中を追って」。

第五章 スタッフの裏切り

「もう、厳しいんじゃない? 」
 一緒に営業に行った帰りに、福田が言う。彼は、「就職オーディション」から僕らにジョインし、イベント名を「逆求人」に変えてからは副代表という立場だった。
 就職オーディションは、合同説明会に近いスタイルで開催した。まずは興味を持ってくれる企業に無料に近い形でブースを出してもらい、学生たちがブースを回る。ところが、それではまったくの赤字で、売り上げが上がる見込みも見えなかった。
 ただ、就職オーディションによって分かったことがある。学生は出会いが足りないし、企業は採用に困っている。採用に困っていないのは大手だけだ。中小企業はネームバリューがないために、学生に興味を持ってもらえない。

 そこで、インパクトを持たせるために逆にしたらいいのではないかと思った。学生がブースを出し、企業が回る。学生に自分をプレゼンテーションをしてもらうのだ。「自分をプレゼンする学生」というだけで企業が興味を持ちそうだ。
 そこに興味を持ったのが福田だった。学生ながらすでに別の事業で起業していた福田は、僕よりも人脈が広く、ビジネスのこともよく知っていた。そのため、それまで副代表だった人を単なるメンバーにして、福田を彼の希望通り副代表にしたのだ。
 能力があると思った福田を突然副代表にしたことで、他のメンバーの士気が下がり、営業に行くのは僕と福田ばかりになっていた。僕は「Edu」の経験もあり、「やる気を出せよ」と言っても通じないことはわかっていた。「人の気持ちがわからない」と言われるだけだ。
 せっかく「逆求人」にして新しい仕組みを考えたものの、思うように売り上げが上がらない。
 先に会場を押さえたり、ブースに必要な制作物を準備をしたりしているので、イベント日より先に支払いが生じる。これまでに受注した微々たる売上では、賄えなくなっていた。

「会場費の支払いが、明日までなんだよね」
 打ち合わせをするために僕の部屋に戻ると、しばらく気になっていたことを告げた。
「え、まだ払えないだろ?」
「そうなんだよ。借りるしかないかな」
「売れる見込みがまだないのに? どこから借金するんだよ」
「消費者金融かなあ」
「なあ、キャンセルするなら、今じゃないのか」
「今からやめるって? そんなことできないだろう」
 その日、お互いの意見は変わらなかった。福田は「もうやめた方がいい」僕は「やめるわけにいかない」。お互いにいろいろな理由を付けて、自分の意見を主張した。

 次の日、福田から「俺は降りる」と連絡が来て、僕は消費者金融から五十万円の借金をした。
 七人いたメンバーは、僕と、もうひとりだけになってしまった。

文 栃尾江美
絵 山本麻央