あの背中を追って-第8回

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

毎週木曜日配信のミンワの新作。株式会社ジースタイラス「あの背中を追って」。
前回の続きをお届けします。

第三章 ギャル向けの雑誌作り

数日後にメールで見せてもらったデザインは、ちゃんと会社の名刺っぽかった。印刷業者に発注して、届くのが待ち遠しかった。

 一週間後に届いた名刺を持って、渋谷109へリベンジに向かう。雑誌に出られるかもしれないとなったら、話を聞いてくれるんじゃないだろうか。
「『Stylish』っていう雑誌の者なんですけど……」
名刺を見せながら声をかける。チラリと見てくれる人もいた。ときどき立ち止まってくれる人もいた。

 二人組の子が話を聞いてくれそうだ。
「雑誌でインタビューのページがあって、ギャルの子たちに話を聞いてるんです」
「どうせエロ本なんでしょ」
「いや、そうじゃなくて」
「じゃあ何の雑誌?」
「ええと……ファッションとか」
「ねえ、なんか怪しいよ。行こ」
 ちょっと立ち止まってくれても、聞いたこともない雑誌では対応してくれない。その日も百人くらいには声をかけたが、まともに話を聞かせてくれる人はいなかった。再度、別の作戦を考えなくてはならない。

 もしかして、実際に見せられる雑誌があればいいんじゃないだろうか。Eduで印刷物も作っていたから、やり方はわかっていた。どんなページなら、ガングロのギャルたちが出たいと思うだろうか。

 当時、109はギャルの聖地だった。最も人気があるのは、「MOUSSY(マウジー)」という店。店長はカリスマと呼ばれ、テレビや雑誌にもよく登場していた。無理かもしれないが、ダメもとで、MOUSSYの店長にインタビューを申し込んでみよう。 ちょうど名刺を持っているから、取材を申し込むのにちょうどいい。

 その足で、MOUSSYの店へ向かった。
「すみません。取材の申し込みで来たのですが」
 ギャルたちと同じように、肌の黒い店員に声をかける。
「あ、はい。ちょうど担当のものがおりますので~」
 まさか。偶然にも広報担当者が店にいたのだ。

「今度『Stylish』っていうギャル向けの雑誌を作る折阪と申します。創刊号の巻頭ページに、MOUSSYの店長に出ていただきたいのですが」 広報担当の女性は名刺を見ると「え、巻頭? それならいいですよ」とあっさりと答えた。
「来週月曜日のオープン前はいかがですか」
なんと、話が早い。

文 栃尾江美
絵 山本麻央