あの背中を追って-第7回

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

毎週木曜日配信のミンワの新作。株式会社ジースタイラス「あの背中を追って」。
前回の続きをお届けします。

第三章 ギャル向けの雑誌作り

僕は朝からずっと、渋谷109の前で、ガングロのギャルに声をかけている。「ちょっと話を……」
さっきまでタラタラ歩いていたのに、近づいて話しかけると足早に通り過ぎてしまう。こちらが話を聞こうとするより前に、全く聞いてもらえない。
Eduの活動で個人に向き合うことに限界を覚え、僕は働くことに目を向けようとした。どうせ働くなら、楽しく、おもしろいことがしたい。そのために目指すべくは、クリエイティブなことだろうと考えた。
そう思うと、今までまったく目を向けていなかったことに興味が出始めた。世の中の流れ、ヒット作、売れている商品。流行など。そこに目を向けると、その真ん中にはギャルがいた。日焼けサロンに通い、さらに黒いファンデーションをして、派手なファッションをするガングロのギャルたちが、まさに時代や流行を動かしていたのだ。
まずは、ギャルに話を聞くべきだろう。雑誌やテレビで情報を集めても仕方がない。本当の声を聴かなくては。それは、ノンフィクション作家に感銘を受けたその時から、変わらない僕のポリシーだ。
ピースボートでも、Eduの活動でも、みんな話を聞かせてくれた。だから軽く見ていたのかもしれない。一方でギャルたちは、話しかけても立ち止まってさえくれない。それ以前に、こちらをちらりとも見ないのだ。
夕方には、声をかけたのは百人を超えていた。今日はもう無理だろう。ただ、なんとしても、ギャルの話を聞くんだ。彼女たちが興味を持って立ち止まるためには、何が必要なんだろう。
「名刺作ってくれない? 雑誌の編集者ってことで」
「名刺デザイン? いいけど。雑誌の名前は?」
「えーと、そうだな……」
「なに、今から考えるの?」
「『Stylish』ってどう? 悪くないよね」
「まあ、スタイリッシュではあるよね」

 友だちのデザイナーはそう言って、電話の向こうで少しだけ笑った。

文 栃尾江美
絵 山本麻央