あの背中を追って-第6回

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

毎週木曜日配信のミンワの新作。株式会社ジースタイラス「あの背中を追って」。
前回の続きをお届けします。

第二章 「死にたい」を救えない

連絡が届いたのは、突然だった。
元旦を待たずして、麻理子は自らの命を絶った。

――どうして、こんなことになってしまったんだろう。僕は麻理子と向き合えていなかったのだろうか。麻理子だけじゃない。ほかのメンバーとも向き合えていないのだろうか。僕の力が及ばなかったんだ。

――それにしても、なぜこんな世の中なんだ。彼女の周りにいる人は何をしているんだろう。ひとりの命すら救えない。

――僕らは、麻理子を守ろうとしていたのに。なぜ、ひとりで決めてしまうんだ。

麻理子に対する怒り。裏切られたような気持ち。世の中に対する怒り。自分に対するふがいなさ。いろんな思いが一気に押し寄せてきた。

その一カ月後、今度は裕司が命を絶った。
つまり、僕は二人とも救えなかったのだ。
「折阪君には、私たちの痛みなんてわかんないよ」
ピースボートで言われた言葉が頭に鳴り響く。
「折阪さんみたいに行動できない」
色紙に書かれた寄せ書きの言葉。
一人ひとりに向き合おうとしても、限界がある。死のうとしている人に、僕ができることは少ない。

僕はその出来事を機に、個人に向き合うのではなく、社会と向き合っていこうと考えた。生きにくい現場を知っているからこそ、できることがあるはず。
これからは、教育の出口である「働くこと」に対しても活動を進めようと考えた。僕自身が、公務員を目指していたからこそ勉強を頑張れたし、その後アルバイトやボランティアをするようになり、結局働くことで社会との接点を見出していたからだ。
働くことがもっと楽しくなれば、教育も変わるのではないだろうか。
「何言ってるの?」
「ついていけないよ」
これまでのメンバーには、説明してもわかってもらえなかった。でも僕は、僕が信じることをやるだけだ。

文 栃尾江美
絵 山本麻央