あの背中を追って-第5回

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

毎週木曜日配信のミンワの新作。株式会社ジースタイラス「あの背中を追って」。
前回の続きをお届けします。

第二章 「死にたい」を救えない

社会に適合できない人たちが、少しでも良くなるように、変わっていけるように活動してきたつもりだった。
たまり場に飾ってある色紙を手に取る。それは、ピースボートを降りるときにみんなが書いてくれた寄せ書きだった。
「突っ走るタイプで、行動力がすごい」
「置いていかれちゃってました(汗)」
「折阪さんみたいに行動できない。尊敬する」

メンバーは、自分の話をしたがる。それに、教育への問題意識もある。だけど行動するとなると難しい。僕ばかりアクションを起こして、まわりはなかなか動いてくれないイメージを持っていた。
僕は、突っ走っているのだろうか? 周りが動かないだけなんじゃないか?
寄せ書きからは、メンバーと向き合っていない僕の姿が見えるようだった。話を聞いて、向き合っていたつもりだったけど、行動することで置いて行ってしまうのだろうか。
その場にいるメンバーとは、イベントの準備から、麻理子に何ができるかという話に移っていた。
ピンポーン。
チャイムが鳴った。みんなで話していた部屋から出て階段を降り、玄関のドアを開けると、外に裕司が立っていた。
「おお、久しぶり」
一カ月ぶりくらいだろうか。僕は裕司をそのまま部屋へ招き入れた。裕司は二十代後半くらいで、あまり話すのが上手ではないタイプ。髪の色は緑だった。
二階へ上がって絨毯の上に座り、メンバーが輪になって話すのを聞いている。相変わらず麻理子の話題だ。
「麻理子は、居場所がないんだよね」
「たぶんここしかないんだと思う。だけど、そんなにしょっちゅう来れるわけじゃないし」
「バイトしてるんだっけ?」
「うん。前はしてたかな。でもすぐ辞めたみたい」
「ほかに頼る場所があれば、気持ちが変わっていくと思う。どうやったら他に居場所を作れるのかな」
今までも同じ話を何度もした。こことは別に、頼れる場所が必要なのだ。
ふと話が途切れた時に、裕司がぽつりと言う。
「俺も死にたいんだよな」
以前から、そうやって軽く言うのだった。裕司も、アルバイトを転々としては、落ち着ける居場所がなくて生きづらくなっている。
結局それから、浩子に電話をすると、麻理子と会う約束をしたと言っていた。数日後、僕からも電話をして、そ知らぬふりで「いつでも待ってるよ」と告げた。

文 栃尾江美
絵 山本麻央