あの背中を追って-第4回

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

毎週木曜日配信のミンワの新作。株式会社ジースタイラス「あの背中を追って」。
前回の続きをお届けします。

第二章 「死にたい」を救えない

ピースボートを降りた僕らは、現実と向き合わなくてはならなくなった。でも、活動は続けていこう。毎日顔を合わせることはなくなるから、拠点が必要だ。Eduのたまり場として、みんなで一軒家を借りた。そこに集まり、話し合ったり、活動内容を相談したりしていた。

活動の幅は広がり、東京だけでなく大阪や名古屋で「これからの教育を考えよう」というテーマでイベントもしていた。

十二月の初旬、借りた一軒家に数人で集まり、年明けに開催するイベントの準備をしていると、中心メンバーの浩子から電話がかかってきた。彼女はいま大阪にいるはずだ。
「麻理子からさっき電話があって、『元旦の日に死ぬ』って言ってるんだけど」
麻理子は、ピースボートから一緒に活動している女の子で、高校を卒業したばかりだった。手首に無数のリストカットの痕。年が明けるまで、あとひと月もない。
「いつも死にたいって言ってたけど、そうやって具体的に言うのは初めてじゃ……」
「どうすればいいと思う? 最近会ってないからよくわからなくて」
関西に住んでいる麻理子は、船を降りてからあまり集まりに来られなくなっていたが、会うたびに不思議なことを言う子だった。
「折阪さんは、ナイトの生まれ変わりだよ。ほら、そっちの肩に妖精が乗っているから、その子が教えてくれるの」
幻覚が見えているのだろうか。ほかのメンバーにも幻想的なことを言うから、あまりなじめていないようだった。

だけど僕は麻理子にも、生きがいや、やりがいのある仕事を見つけてほしいと思っていた。
僕は電話の先の浩子に向かって言う。
「話を聞いてあげたらいいんじゃないかな。会いに行けたら、行ってほしい。僕らからも電話してみるよ。できればそっちでも集まって対策を相談してみて」

あまり大したことは言えずに、電話を切った。

文 栃尾江美
絵 山本麻央