あの背中を追って-第3回

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

毎週木曜日配信のミンワの新作。株式会社ジースタイラス「あの背中を追って」。
前回の続きをお届けします。

第一章 世界中を回る船の上で

 船の上では、ボランティアとして働きながらでも、毎日時間がたくさんあった。食事どきにみんなで集まり、その後もたくさん語り合う。
「私みたいに両親が最悪なのはどうにもならない。運が悪かったなーって思う」
「家庭環境はひとそれぞれ。だから、これからは教育を変えていく必要があるんじゃないのかな」
 最初は数人だった集まりが、徐々に増えていった。居場所がない人たちが集まり、話をするだけで大きな価値があると思えた。
 そのうち、この集まりに「Edu」という名前が付いた。
「ここで出た意見をそのままにしておくのはもったいない。話すだけじゃなくて、発信しよう」
 そう言って、話している内容をまとめ、A3用紙に「Eduニュース」として手書きで原稿を書いた。コピーして船に乗っている人たちに配布した。
 最初はどれほど読まれるか不安もあったが、かなり手ごたえのあるものだった。配布するたびに、メンバーが増える。集まりに参加するメンバーだけでなく、記事を書く人たちも増え、毎週発刊できるようになった。
「今度、『いじめ』をテーマに書いてくれない?」
 そんな風に、記事や特集にリクエストが届くようにもなった。
「せっかく媒体があるのだから、いろんな人にインタビューしてみよう」
 そうやって、船が降り立つ先々で、インタビューの依頼をした。インドネシアの大学を訪れたり、インドの若者と交流して座談会をしたりした。
 船に乗ってくるさまざまな著名人にも話を聞いた。作家、弁護士、テレビに出ているような著名人にインタビューする機会もあった。
 Eduの集まりには、毎回三十名を超える人数が集まるようになった。

だがときどき、こんな風に言われることがあった。
「折阪君は、ちゃんと大学に行っているし、あまりにまともに生きてるよね。そんな人に私たちの痛みなんてわかんないよ。何言ったってきれいごとだよ」
 日常とあまりにも離れた場所で、居場所を作ったつもりだったが、いずれ旅は終わってしまう。

文 栃尾江美
絵 山本麻央