あの背中を追って-第2回

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

毎週木曜日配信のミンワの新作。株式会社ジースタイラス「あの背中を追って」。前回の続きをお届けします。

第一章 世界中を回る船の上で

 予備校を辞め、大学へ行く意味もよくわからなくなっていた僕は、バックパッカーでいろんな場所を旅した。その後しばらくすると、ピースボートの船の上にいた。
 ピースボートとは、数ヵ月 かけて船で世界一周をする旅のことだ。五十万円以上もする旅費は、ボランティアとして船内で働くことで割引になる仕組みだった。そこには、純粋に旅行を楽しむ人のほかに、社会に受け入れられなかったり、日常生活で居場所がなかったりする人たちが多くいた。

「二年後には、世界が滅亡するんだ。何か新しいことをしても意味なんてない」
 目の前の二〇代の男は、いわゆる、「ノストラダムスの大予言」を信じ、世界に絶望していた。二〇〇〇年に世界が滅亡するとした言葉を信じて、自暴自棄になっているようだった。
 さっきまでは、その横の女子高生が、自分が育った家庭環境の話をしていた。
 「親はほとんど家にいなくて、友だちの家でご飯を食べていたんだよね。だけどまあ、ずっとってわけにもいかないよね。今は家を出て転々としてる」
 そう話していた彼女の左手首には、刃物で切った浅い傷が何本も走っている。
 「この旅が終わったら死のうと思っているんだけど、せめてその前に世界を見ても悪くないかなって」

 そう話していたのは、どこで働いても職場になじめず、毎回仕事を辞めることになり、ここ半年ほど引きこもっていた男性だった。
「この社会では生きていけないから、俺は死ぬしかないんだ」
 テレビや新聞のニュースで見聞きする話。リストカットや、引きこもり、不登校、いじめ……。そういう社会の問題は、ニュースの中だけでなく現実としてあるのだ。
 ノンフィクション作家が、異国の地の食べ物を逃げずに取り込んだように。僕もこの人たちの問題を受け入れられないだろうか。僕ができることは何だろう。



文 栃尾江美
絵 山本麻央