【世界のミンワから】第20回「ヘッセンにヤギがやってきたわけ」

このコラムについて

世界は物語であふれています。面白い話もあればつまらない話もあり、学びがある話もあれば、全く何のためにもならない話もあります。
そんな世界各地に伝わるミンワを紹介していきます。きっと何かが感じられるはずです。

むかしね。
ヘッセンの国には一匹もヤギがいなかったんだ。
国の境にオオカミがいて、ヤギを入れないようにしていたからね。

だけどヘッセンにはきれいで美味しそうな草があったから
ヤギたちは何とかして入る方法はないかと相談していたんだ。

そして、まず子ヤギを国境に送り込んだんだ。

オオカミは子ヤギを見るなり、走り寄って声をかけた。
「どこへ行くつもりだ?」
「ヘッセンへ」
と子ヤギは言った。

だけど荒っぽいオオカミは大声で脅した。
「お前を食ってやる。」

すると子ヤギは今にも泣きだしそうに言ったんだ。
「僕みたいに弱い子ヤギを食べるつもりかい?
後からお母さんが来るよ。母さんは僕なんかよりずっと大きいよ。」

そいつぁ悪くない、とオオカミは子ヤギを通して言った。
そのあとすぐ歳をとった雌ヤギがやってきて、やっぱりヘッセンに行こうとした。

「どこへ行くつもりだ?」
オオカミは雌ヤギを呼び止めた。

「ヘッセンへさ」
雌ヤギはそう答えた。

そこでオオカミはまた言った。
「お前を食ってやる」

ところが雌ヤギは言った。
「私みたいな歳をとって痩せたヤギを食うつもりかい?
後から夫が来るよ。私よりずっとおいしい肉が食べられるよ。」

そこでオオカミは雌ヤギを通してやった。

その後やってきたのは大きな角のある雄ヤギだった。
オオカミはこわごわ雄ヤギを見つめてから言った。
「その頭の上にあるのはなんだ?」
「これは俺の二丁拳銃だ」
「じゃあ、その体にぶら下がっている袋は何だ?」
「これは弾の入った袋だ」
雄ヤギはそう答えてから短い尻尾を上げて、黒くて小さな弾を2,3個落とした。

それを見たオオカミは恐る恐るたずねた。
「これはな、おれの拳銃の弾だ」

こいつはまずい、とオオカミは一目散に近くの森に逃げ込んだ。
それで雄ヤギもヘッセンにやってきたってわけだ。