【世界のミンワから】第12回「青い山からきたタバコ」

このコラムについて

世界は物語であふれています。面白い話もあればつまらない話もあり、学びがある話もあれば、全く何のためにもならない話もあります。
そんな世界各地に伝わるミンワを紹介していきます。きっと何かが感じられるはずです。

カナダの森の奥に大きな木に囲まれた湖がありました。
湖の岸辺に夫婦と二人の子供が住んでいました。
子供たちは大きくなるにつれて、とてもとても美しくなりました。

子供たちが12歳になった時に、そのあたりに、恐ろしい病気が流行りました。
子供たちはその病気にかかって死んでしまいました。
お母さんもまもなく死んでしまいました。

たった一人取り残されたお父さんは、それはそれは悲しんで、いっそ死んでしまうかと思いました。

でもやっと気を取り直して
「そうだ、これから先、わしは人を助けて暮らすことにしよう。人のために尽くせば、わしも落ち着いた穏やかな毎日を過ごすことができるだろう。」
と自分に言い聞かせました。

その日から、お父さんは弱いものや貧しい人たちのために一生懸命働きました。
村中の人がお父さんを誉めました。

そして「おじいさん」と呼んで誰もかれもが大切にしてくれました。

おじいさんはだんだん年を取って動けなくなりました。
みんなのために働いたおじいさんは誰からも好かれていましたが、それでも寂しくてたまらなくなることもありました。
たった一人で暮らしていると昼も夜も退屈でした。

ある日おじいさんは湖のほとりにしょんぼり座って若いころのことやおかみさんや子供たちのことを思い出していました。

その時ふいに向こうの青くかすんだ山から黒雲のような鳥の群れが飛んできました。
おじいさんもまだ見たことのない鳥でした。
村の人たちは珍しい鳥の群れをとても怖がって
「あれは何か悪いことが起きる知らせだよ。」
と言い合いました。

まもなくその中の一羽の鳥が羽をはばたかせながら地べたに落ちてきました。
見ると胸に矢が突き刺さっています。
「おや、誰もうたなかったのに矢が刺さっているとは不思議だなぁ。」
とみんな口々に言いました。
村の人たちはどうしたらいいのか分かりません。

そこでおじいさんの周りに集まっておじいさんの顔をじっと見つめていました。
落ちた鳥は地べたに横たわって苦しそうに震えています。
仲間の鳥たちは高い声で鳴きながら輪を描いて待っています。

やがて鳥の群れは矢の当たった一羽を残して青くかすんだ山の方へ帰っていきました。