【世界のミンワから】第10回「オアシスの老人」

このコラムについて

世界は物語であふれています。面白い話もあればつまらない話もあり、学びがある話もあれば、全く何のためにもならない話もあります。
そんな世界各地に伝わるミンワを紹介していきます。きっと何かが感じられるはずです。

二つの町に挟まれたオアシスに一人の老人が座っていました。
通りかかった男が老人に尋ねました。
「これから隣の街に行くのですが、この先の街はどんな街ですか?」

老人はこの質問には答えずに、聞き返しました。
「今までいた街は、お前にとってどんな街だった?」

男はしかめっ面をして言いました。
「たちの悪い人間が多くて汚い街でした。だから隣の街に行ってみようと思ったんです。」

すると老人はこう答えました。

「お前がそう思っているなら、隣の街もたちの悪い人間が多い、汚い街だろうよ。」

しばらくすると、さっきの男が来た街と同じ街から、別の男がやってきました。
その男はさっきの男と同じように老人に尋ねました。

「これから隣の街に行くのですが、この先の街はどんな街ですか?」

老人はこの質問には答えずに、聞き返しました。
「今までいた街は、お前にとってどんな街だった?」

男はにこやかに笑い、答えました。
「親切な人が多くて、きれいな街です。」

老人はこれを聞いてこういいました。

「なるほど。お前がそう思うなら、隣の街も親切な人が多い、きれいな街だよ。」


アラブのミンワです。

偶然すれ違った老人の話を信じるのもいかがなものだと思います。
どちらの街に住んでいたのかもわからない道の真ん中の老人です。

情報が少なかった昔は少しでも多くの情報を得ようとしていたのでしょうか?

では、情報の少なかった昔と情報の圧倒的に多い今とどちらが騙されることが多いのでしょうか?
昔は情報のソースは圧倒的に人です。
印刷の技術が発展していなかったため、物語のように人から人へ語り継がれている情報がほとんどです。

一方、現代はWEBの情報や印刷物、TVなど、直接話を聞くのではなく、
間接的に情報を得られる時代となっています。

ならばやはりソースがはっきりしている人からの情報が多い昔の方が騙されにくかったのでしょうか?

しかし昔は騙された人が仕返しに来るコストが今とは比べものになりません。

この話でいえば、隣町に行って、実際に経験し、その上で戻ってきて老人に詰め寄らなければなりません。
その時まで老人がそこにいればの話ですが。

普通に考えれば、老人は動きますので、探す手間を考えれば、きっと探さないでしょう。

ということを考えると、昔は意外と嘘をつき放題だったのかもしれません。

現代に生きる私たちは正直であることが善と信じ切っています。
きっとビジネスでも正直であればあるほどに信用が積み重なり、結果自分に返ってくると信じられていると思います。

私はもちろん正直であることは大切だと思っていますが、正直であればビジネスが成功するとも思っていません。

よくビジネス本にあるような、成功の条件は、数ある成功の条件のうちの一つだと思うのです。
失敗には失敗の原因があると思いますが、成功はいくつもの要因が絡み合って、成功するのだと思います。