沈みゆくボート-第5回

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

毎週木曜日配信のミンワの新作。杜若経営法律事務所の「沈みゆくボート」。
前回の第二章「たった二日で」の続きをお送りします。


第二章 たった二日で

会議が終わって自席に戻り、案件の整理をしていると、事務所の電話が鳴った。向井が受ける。
「向井先生はいらっしゃいますか」
「はい、私ですが」
「ホームページを拝見してお電話したのですが… … 」
「え… … 」
昨日公開したばかりなのに、翌日に問い合わせがあるなんて。インターネットの反応の速さに驚いた。向井は半信半疑になりながらも、受話器をきつく握りしめていた。
話を聞くと、電話の相手は中小企業の社長。労働組合が、社長の意見を全く聞かないのだが、どうすればいいのかという相談だった。
「近々お会いできますか? 」
「ええと、明日の午後三時ではいかがでしょう」
話はとんとん拍子に進んだ。
翌日、訪問した会社から最寄り駅へ向かう途中で、向井は父の誠に電話をしていた。
「父さん。ホームページの件覚えている? 」
「ああ、もちろん。正月来た時に『準備中だ』って言っていたよな。その後どうなった? 」
「いや、すごいんだよ。驚いたよ。実は一昨日公開したんだけど、昨日電話で問い合わせがあって、今日十万円の顧問契約が決まったんだ! 」
「そりゃすごいな。おめでとう」
「『ホームページを見て信頼できると思った』って言われた。父さんに言われた通り、プロに頼んで正解だったよ。ありがとう」
「それはよかったな。人がうまくいったことを早めに真似すると、よいほうに転がっていくものなんだ」
向井は電話を切ると、大きく深呼吸をした。まだまだこれからだと思いつつも、興奮で胸が高鳴るのを感じていた。