ほんとうは教えたくない とうかいのいまはむかし-第9回

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

毎週木曜日配信のミンワの新作「本当は教えたくないとうかいのいまはむかし」。前回の第五章の続きをお送りします。

第五章 採用はすべての柱。新たなるチャレンジ
一年後、久野は風変わりなイベント会場にいた。そこは企業がブースを出すのではなく、二十名ほどの学生が一人ずつブースを出している。企業の担当者が、学生が出しているブースを回っているのだ。
「今回も大成功じゃないですか! 」
二回目となった「逆求人」のイベントも終盤に差し掛かっていた。参加者にそう言われた久野はほっと胸をなでおろした。
同時に、ふつふつと喜びが沸いていた。
通常の会社説明会や採用イベントは、会社がブースを出して就活生を待つものがほとんどだ。ところが、学生側が「情報収集するだけ」という受け身の意識で参加するため、マッチング率が低い。
採用に本腰を入れるようになり、さまざまな学生と話してみると、大手に就職するよりも、中小企業で即戦力になりたいと考えている優秀な学生も多いことが分かった。そういう学生に絞って、中小企業とマッチングできないかと考えたのだ。
「逆求人」は、企業ではなく、本気で中小企業に入社したい学生がブースを出す。自分をアピールしつつ、入社する会社を選ぶのだ。企業はブースを回りながら、採りたい学生を探す。企業も学生も本気で取り組める理想的な形だと久野は考えている。

「久野さん!  今回もありがとうございました」
イベント後、片づけをしていた久野に声をかけてきたのは、一回目の「逆求人」イベントに参加した企業の担当者だった。その時に採用したい学生が見つかり、今回も参加してくれたのだ。
「今回も、いい子がたくさんいましたね! うちを選んでくれるよう、めいっぱいアピールしましたよ」
このイベントでブースを出した学生は、希望の会社へ就職が決まる率が高い。「企業が落とす」という通常の採用とは異なるため、学生の精神的負担も少ない。
逆求人イベントを用意するにあたり、採用に関する様々なノウハウを蓄積してきた。それを顧客に提供するため、これまでの顧問契約以外にも仕事の幅が広がった。

久野は、今が会社にとって二度目の創業期であると感じていた。
一度目の創業期、駆けずり回って獲得した顧客。初めての契約に涙した日。その時はまだ、自分の会社や、顧客の会社の成長に寄与していなかった。自分
の生活を守るだけだった。
今ここへきて、顧客の成長を大きく助けることができると実感している。


文 栃尾江美
絵 山本麻央