ほんとうは教えたくない とうかいのいまはむかし-第8回

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

毎週木曜日配信のミンワの新作「本当は教えたくないとうかいのいまはむかし」。前回の第4章の続きをお送りします。

第五章 採用はすべての柱。新たなるチャレンジ

「働き方改革って言うけど、中小企業じゃ難しいんだよ」
久野は、土田の会社を訪問していた。会議室で頼まれていた書類を一通り説明した後のことだった。
これまでもときどき、人材募集のための原稿を書いたり、採用の相談に乗ったりしていたが、具体的な戦力となる手伝いはできていなかった。
土田の会社では、社員の長時間労働を問題視していた。人員が足りないから、ひとりひとりの負担が大きくなる。人を増やすにしても、誰でもいいわけではない。有名な採用サイトを利用すれば採れるかもしれないが、ひとりあたり数十万円から百万円に近い出費になる。
せっかく高い予算をかけて採用しても、すぐに辞めてしまうことも何度かあった。
「何かお手伝いできればいいんですが…… 」
久野の会社で、マッチングするための採用サイトでも持っていればいいのだが、そう簡単に作れるわけはない。それに、採用市場は大手がしのぎを削っており、同じ土俵で太刀打ちできるわけもない。

同時に、久野は自分の会社にも同じ課題を感じていた。社労士は顧客に雑務を頼まれることが多く、時給に換算すると単価がなかなか上がらない。
したがって、社員が長時間勤務になりがちな上、十分な報酬を与えているとはいいがたい状況があった。
「採用を本気でやってみよう。お客さんのためにも、自分たちのためにも」
いつからか、久野はそう思うようになっていた。


文 栃尾江美
絵 山本麻央