ほんとうは教えたくない とうかいのいまはむかし-第2回

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

毎週木曜日配信のミンワの新作「本当は教えたくないとうかいのいまはむかし」。前回のプロローグの続きをお送りします。

第一章 売上を増やせばそれでいい

「おまえ、メーカーさんに何をしたんだ? 」
2 0 x x 年、名古屋の中心地にある百貨店に入社して一年目。催事場の担当だった久野は、営業部長の佐々木に呼び出されて説教を受けていた。
久野が担当した二週間の紳士服フェア。スーツを中心に揃えたフェアは、売り上げが前年度の十五パーセントアップとなった。久野としては、成果が出ればそれでいい。「いいアイデアだった」と思っていたのだが… … 。
「ええと、応援に来てもらう売り場スタッフを… … 」
「久野!  自分が何したかわかってんのか! 」
聞いたから答えようとしたのに、途中で遮られる。この佐々木という男はいつもこうなんだ、と久野は心の中で舌打ちをした。
通常、催事場で紳士服などのフェアをするときには、各メーカーから応援スタッフを数名ずつ派遣してもらう。そのスタッフに売れるスキルがあれ
ば、売り上げがアップするだろうと踏んだのだ。だから久野は、派遣する売り場のスタッフを細かく指定した。百貨店だというおごりもあったのだろう、
「取引停止」もちらつかせた。
売り場に「売るスキル」の高いスタッフがいれば、必ず売り上げは上がる。成果を出しさえすればいい。その時の久野はそう考えていた。

三十分ほどこっぴどく叱られ、始末書を書くことになった。確かに、脅迫めいたことをするのはまずかったと、さすがの久野も反省した。だが「売れたほ
うがいいに決まっている」という思いは変わらなかった。
これまでも、佐々木に叱られることは多かった。受け取った図面を全く無視して商品を陳列し、翌日出勤した佐々木に大声で怒鳴られたこともあった。
その日は、オープン前に必死で図面通りのレイアウトに直した。
久野は上司の指示通りに進めるより、売れると思う手法を重視した。売り場の経験こそ浅かったが、自分なりに勉強をしていたつもりだった。関連書籍を読み、雑誌を購読し、売り場に出て顧客の動きを熱心に研究した。
佐々木から指示された図面通りでは、自分がそれまでに勉強してきたノウハウが活きない。だから、売れるレイアウトにしたつもりだ。だが、検証のしようがない。売れないレイアウトと、売れるレイアウトを別々に用意して比較することはできないのだ。
「俺が思う通りやれば、もっと売れるのに… … 」
心の中でいつもそう思い、評価されない状況に悔しさを覚えていた。
一年目は、同じ年に入社した同期の中でもっとも査定が悪く、ひどく落ち込んだ。出世欲も強かったため、「このままでは出世できない。どうすればいいのか」と考えることも多かった。