やくざいしまるやまだいすけのおはなし-第5話

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

やくざいしまるやまだいすけのおはなしについて

新しい医療サポートを始めようと思ったきっかけの物語。
医療機関と患者さんとの間に、まだまだ溝があることを感じた日々。
薬剤師の丸山は自分ならばその溝を埋める手助けができるのではないか、と考え、そして行動に移しました。
これは薬剤師として感じた悔しい思い、嬉しい気持ち、未来への希望が新しいサービスを生み出すに至った物語です。

毎週木曜日配信のミンワの新作「本当は教えたくないとうかいのいまはむかし」。
今回は最終章。前回の「ベテラン医師なら、痛がらず安らかに」の続きをお送りします。

エピローグ
 調剤薬局を辞めることになり、お世話になった関係者のもとへ挨拶に回っていた。ある病院の院長は私のために時間を取ってくれ、院長室で少し話をした。
「これから、どうするの? 」
院長が聞く。僕は、これから手がけようとしている仕事を説明した。
「患者さんの症状によって、一番いい医者を紹介するわけか。それはまるで『医療ソムリエ』だなあ」
僕がワイン好きなのを知ってか、例えが上手い。
「丸山さん。いろんな医者がいるけど、腕のいい医者が、しゃべりが上手いとは限らない。また、しゃべりが上手いから腕が立つわけでもない。だから、患者さんにはいい医者がわかりにくい。そこを繋ぐっていうのは、意義のある仕事だと思うよ」
「そう言っていただけると、勇気が出ます。実は患者さんの方も、自分の思っていることを上手く伝えられていないことが多いんです」
「ああ、そうかもしれないね」
「『先生は間違えない』『先生に意見してはいけない』と思っている方が多く、自分で何か選択ができるとは思っていないんです。そんなところも、サポートしてあげたいと思っています」
「じゃあ丸山さんはソムリエだけじゃなく、医者と患者さんの双方を繋ぐ翻訳家にもなるわけだね」
病院を出ると、少し日が暮れて空がオレンジ色になっていた。僕は少し足を止め、これから進む道を思って空を見上げた。
「あの…… 」
誰かから、声をかけられた。
「ああ!  あのときの」
それは、以前調剤薬局で相談を受けた、飯山さんだった。
「先ほど病院の中で見かけて、あのときの薬剤師さんかな、と思ってね。あれから、実はこちらの泌尿器科にお世話になってまして。今では、朝まで眠れるようになりましたよ。あのとき教えてもらったおかげです」
言葉を選んで「病院を替える方法もある」と忠告した、その言葉がこうしてちゃんと届いていた。
「本当に、ありがとうございます。感謝しています」
この笑顔が、僕を前に進めてくれる。こういう人をひとりでも増やすために、僕は新たな道を歩き始める。

 

※ 登場人物は、すべて仮名です。
※ この物語は実話に基づいています。


文 栃尾江美
絵 山本麻央