やくざいしまるやまだいすけのおはなし-第4話

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

やくざいしまるやまだいすけのおはなしについて

新しい医療サポートを始めようと思ったきっかけの物語。
医療機関と患者さんとの間に、まだまだ溝があることを感じた日々。
薬剤師の丸山は自分ならばその溝を埋める手助けができるのではないか、と考え、そして行動に移しました。
これは薬剤師として感じた悔しい思い、嬉しい気持ち、未来への希望が新しいサービスを生み出すに至った物語です。

毎週木曜日配信のミンワの新作「本当は教えたくないとうかいのいまはむかし」。前回の「病院選びや難しい言葉の解説をていねいに」の続きをお送りします。

ベテラン医師なら、痛がらず安らかに
「死ぬ間際にすごく痛がって。見ているのが辛かった」
そのことを初めて聞いたのは、しばらく疎遠になっていた従姉妹の葬儀の日。
卵巣がんが全身に転移して、わかったときには手遅れだったのだという。
彼女の夫が言うには、痛み止めのためのモルヒネを本人や家族、医師が使いたくなかったらしい。
モルヒネは、麻薬だ。その言葉のインパクトからか、慣れない医師は使うのをためらう。だが、今は末期がんならモルヒネを使うのが一般的だ。がんの末期に使うモルヒネは、麻薬中毒になりにくいうえ、痛みを緩和することでストレスが減るから、病状が悪くなりにくい。
僕がもっと早く話を聞いていれば、ベテラン医師による緩和ケアを勧めた。
そうすれば、痛がることなく安らかに逝けたはずだ。家族が「見ているのが辛い」なんて思いをする必要もなかった。最期までの時間も、おだやかに過ごせたはずなのに。
僕は、生きていた頃の彼女を思い出しながら、痛みに苦しむ様子を想像せずにいられなかった。同時に、緩和ケアによっておだやかに、眠るように亡くなった患者さんのことを考えていた。

調剤薬局に勤める薬剤師は通常、自分で薬を取りに来られる人にしか会うことはない。ところが、勤めていた調剤薬局は在宅医療をしている人に薬を届けるサービスもしていた。また、薬局としては珍しく無菌調剤室があり、在宅で緩和ケアをしている患者さんへモルヒネを届けることもできる。僕は、七〜八年ほど在宅医療に関わっていた。
在宅医療をしていた浜内弐吉さんは、全身に転移した末期のがんだった。
僕は、カセットにモルヒネを充填して、医師や看護師と共にお宅へ伺い、届ける役目。
浜内さんの痛みは、皮下脂肪へのモルヒネ投与では治まらず、脊髄投与となった。ただ、その後に脊髄でも効かなくなり、くも膜下に挿入したカテーテルから投与するようになった。それによって、モルヒネの量が少なくてもよく効くのだ。
五十万円ほどもするポンプを使い、医師か看護師がカセットを交換し、スイッチを押してモルヒネを投与する。
掛け布団すら痛いと感じるほどなので、できるだけ部屋を暖かくして、毛布は薄くて軽いものにしていた。それでもある日、浜内さんは「毛布が当たって痛い」と言う。僕は、モルヒネを増やすことを医師に提案した。
次に伺ったとき「いくらか痛みは治まった? 」と聞くと「ああ、いくらか楽だよ」と言う。よかった。ところがよく見ると、毛布の内側、体に沿って針金のようなものが渡してある。毛布が体に直接触れないように奥様が手作りされたのだと聞いて、温かな気持ちになった。