やくざいしまるやまだいすけのおはなしー第1話

このコラムについて

ミンワとは泥や失敗やこっぱずかしさ、
カサブタやひだひだの一杯ついた本当の物語。
創業や商品開発、危機的状況を乗り越えるたびに新しく生まれています。
ミンワの新作は現代の企業における新しいミンワを紹介していきます。

やくざいしまるやまだいすけのおはなしについて

新しい医療サポートを始めようと思ったきっかけの物語。
医療機関と患者さんとの間に、まだまだ溝があることを感じた日々。
薬剤師の丸山は自分ならばその溝を埋める手助けができるのではないか、と考え、そして行動に移しました。
これは薬剤師として感じた悔しい思い、嬉しい気持ち、未来への希望が新しいサービスを生み出すに至った物語です。

毎週木曜日配信のミンワの新作。今週から「やくざいしまるやまだいすけのおはなし」をお送りします。


はじめに
 私が「やくまる」を始めようと思ったきっかけ。
それは、医療機関と患者さんの間に、まだまだ「溝」があると考えたからでした。
「私なら、その「溝」を埋める手助けができるのではないか」患者さんや私自身の家族と関わる中で、そう思った経験がいくつもあったのです。
この物語は、それらのエピソードを小説のように読みやすくしたものです。

「やくまる」をご活用いただくことで、何が変わるのか。薬や医師との関わり方、医療に対する考え方、そして、最期のとき。それらを実感していただけると思います。

また、ひとつの読み物としても楽しんでいただけたら、こんなに嬉しいことはありません。
私が感じた悔しい思い、嬉しい気持ち、未来への希望。ぜひ一緒に、味わってみてください。




プロローグ
「他の病院にもかかってるんですね? 」
調剤薬局のカウンターで、僕は手元にある〝おくすり手帳〞をめくりながら尋ねる。カウンターの向こうにいる飯山六一さんは八十歳。
顔つきなどは元気そうに見えるものの、いろいろな不調がある年齢だ。
「尿がずっと出づらくてね。夜中に何度も起きてしまうから、泌尿器科で薬を出してもらってるんだけど」
僕はパラパラと手帳をめくりながら、薬の名前を確認した。抗生物質が出ている。
「おしっこをするとき、痛いですか? 」
「いや、痛くない。何しろ出にくいんですよ」
僕は医師ではないけれど、症状からおおよその病名は予想が付く。おそらく、年齢からして前立腺肥大症ではないだろうか。
確かに、飯山さんのような症状のときに抗生物質を出すことはあった。
ただそれは、昭和二十〜三十年代の治療法で、古すぎる。今は、専用の薬を処方するのが一般的だ。
「この薬を、どれくらい? 」
「うーん、もう三年になるかなあ」
驚いた。三年の間、毎晩何度も起きて、辛い思いをしているなんて…… 。
抗生物質を処方した医師は、もしかしたら勉強不足なのかもしれない。
医師免許は更新制ではないから、昔の知識のままで診察していても何のおとがめもない。最新の医療の知識を常に吸収していくかどうかは、その医師の善意にかかっている。
だけど、僕は医者ではない。調剤薬局で働く薬剤師は、診察することができない。
薬の飲み合わせなどで、「どうしても」という場合のみ、医師へ問い合わせる「疑義照会」が許可されている。
僕は飯山さんの困ったような顔を見つめながら、下唇をかみしめた。


文 栃尾江美
絵 山本麻央